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りゅうぱぱもいくよ~奏音には勝てません~
「やっと来たか」
優真を抱っこし和服の着流しで一行を出迎えたのは先々代の上総だった。
「明日来るって聞いていたから、裕貴と心は朝早くデートに出掛けていねぇぞ」
「ゆうくんはお留守番ですか?」
「優真がいたんでは子作りに専念できねぇだろう。なんとかっていう、子宝の湯で有名な温泉に日帰りで出掛けたんだ」
「ゆうくん、あかちゃんほしい。じぃじは?」
「じぃじも、優真みたいに可愛い孫がもうひとりくらいいてもいいかな」
裕貴も心も男。どう頑張ってもそれは無理だろう。遼成と龍成が言い返そうとしたら、
「かなたもあかちゃんほしい」
「は?」
「マジか?」
奏音が目をキラキラと輝かせ、ふたりの袖を引っ張った。
「実はな、ここだけの話し、地竜が引き取り手のない赤ん坊を連れて帰国することになってるんだ。近親相姦で産まれた子らしく、脳に障害があり、他に心臓や神経系、骨の疾患を持っている。懸命に生きようとしている赤ん坊を日本で治療するため、連れてくるそうだ。裕貴と心はその子を手元に引き取るつもりでいる。優真のパパとママが決めたことだ。儂は反対するつもりはない。優真の子守りと組事務所の留守番くらいしか出来ないけど、こんな老いぼれでもふたりとも儂を頼ってくれるんだ。老体に鞭を打ってでも頑張らねぇとな。たいしたもてなしは出来ねぇが、ゆっくりして行け」
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