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弓削さんお帰り!

「退院明日じゃなかったの?」 「姐さんのところに一日でも早く帰りたいって、我が儘を言いやがって。それで午前中に迎えに行ったんだ」 根岸と伊澤が連れてきたのは弓削だった。長い入院生活で少しやつれてはいるものの、その目は生き生きとしていて輝いていた。 「縣家に全員集合しているって聞いて。それで、福島に帰る前に挨拶に」 「まぁ~~律儀な男ね」 千里や裕貴らひとりひとりに頭を下げ、これからも宜しくお願いします。と挨拶をして歩いた。 「遼&龍は、光希と台所よ」 「全然離れようとしない」 「奏音の方が大人だな」 笹原が、四人仲良く並びごはんをもりもり食べる奏音の頭を嬉しそうに撫でた。 「腹の傷は?」 「1ヶ月半過ぎてもまだ痛むが、姐さんを守れたんだ。名誉の傷だ。このくらいたいしたことない」 「正気の沙汰じゃねぇぞ。これからはあまり無茶するなよ」 退院祝だと言って財布から小さな袋を手渡した。 「お守りか?ありがとう」 大事そうに胸ポケットにそっとしまった。

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