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弓削さんお帰り!
「光希」
遼成と龍成の声がいつにも増して台所に甘く響く。
なめらかな低音で名前を呼ばれることに弱い、という自覚が光希にはあった。
こういう時はふたりして同じ声なんだもの。ズルいよ。
内心そう思いながら、ふたりの袖にきゅっとすがりつくと、遼成には首筋を押さえられてキスをされた。
龍成には角度を変えては何度も、柔らかく、啄むようなキスをされた。
熱く潤んだ目でふたりを見つめると、
「それ反則だろう」
「たく」
ふっと笑ったふたりにもう一度唇を重ねられ、軽く吸われて喉がこくんと鳴った。
その直後、
「ママ、お客さんだよーー!」
奏音が元気に駆け込んできた。
「またお預けか」遼成と龍成が目を合わせるとやれやれとため息をついた。
「奏音、呼びに来てくれたんだね。ありがとう」
「うん」
ふたりの肩を借りてシンクから下りると、奏音が甘えるように光希に抱き付いた。
ママはパパたちだけのものじゃないよ。勝ち目はないのは百も承知。でも何もしないよりはましと目で訴えた。
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