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リエンフワ
クーハンのなかを見ると、生後半年くらいの赤毛の赤ん坊がお手手を万歳してすやすやと眠っていた。
「名前は蓮花 。性別は男。生まれつき耳はほとんど聞こえていない。身振り手振り、笑顔で話し掛ければなんとかなる。裕貴、あとは任せたぞ。優真、いずれお前の弟になるかも知れない赤ん坊だ。可愛がってやれ。意地悪したら駄目だぞ」
「はぁ~~い。パパ、あかちゃん、かぁいい!」
いつの間にか裕貴の足にしがみついてた優真が歓声をあげた。
「おぃ、地竜」
用件を済ませると、弓削に帰るぞと声を掛け、裕貴が止める間もなく一緒に歩き出した。
「ゆうくんどうした?」
心が様子を見に来た。
「その子……もしかして……」
赤ん坊を一目見るなり声を震わせた。
「あぁ、そうだ。それにしても相変わらず神出鬼没なヤツだな」
赤ん坊を起こさないように心がそっと抱き上げると、それまで寝ていた赤ん坊がぱっと目を覚まし、にこっと微笑むと小さな手で心の服をぎゅっと掴んだ。
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