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しずくとさくら

「それだけ元気なら大丈夫だ。光希、悪いがさくらを抱っこして布団まで運んでくれないか。寝かし付けは任せろ」 あれほど甘えん坊で焼きもち妬きだった遼成。まるで別人のようだ。 「遼兄貴がついに覚醒した」 「信孝も子煩悩だし、なによりあの遥琉が……橘の尻に敷かれている恐妻家の遥琉がだよ、橘にびしばし怒られながらも、ちゃんとパパしているんだもの。なるようになるものだよ」 「そうか、なるほどな」 「ねんねしようね」 光希がさくらを横に抱っこし、笑顔で話し掛けるとさくらもまたにこにこの笑顔になった。 「目が見えないとは思えないくらい、綺麗な目してるよね」 しずくの隣に寝せると、遼成が添い寝し、ふたりが寝るまで側から離れようとはしなかった。 「パパ、お水」 「おぅ、ありがとう」 ママに口移しで飲ませてもらうつもりでいた龍成。あては外れたが、可愛い息子に飲ませてもらい、上機嫌だった。

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