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再会
日本大使館の元一等書記官を逮捕。カルト集団と黒竜から賄賂を受け取り、当時12歳と11歳の少女を大麻漬けにし、性的暴行を繰り返す。ふたりの少女はその後、ほぼ同時期に女児を出産。その後の調査で……
「コイツがしずくとさくらの父親か」
「善人面してとんでもない悪党だな」
事務所から帰ってきた遼成が龍成と一緒にニュース番組を見ていた。
「地竜が証拠とともに実名で告発したんだ。そりゃあ、芋づる式で次から次に事情聴取されて逮捕されるわな」
「連中は地竜の本当の怖さを知らない。なぜ死神と呼ばれるようになったかその由縁を」
11年かけてコツコツと証拠を集めた地竜。被害にあった元少女たちが国に慰謝料の支払いを求め一斉に提訴したときもあまり表に出ず陰ながら支えた。
「オヤジ、龍一家の組長がお見えになりました」
「おぅ、来たか。通せ」
若い衆に案内され、裕貴ともうひとり、車椅子に乗った遼成と同世代の男が姿を現した。
「どうだ10年ぶりのシャバは」
「那和がまさかずっと待ってくれているとは思わなかった。縣さん、龍成さん感謝します。ありがとうございます」
「俺たちはなにもしてない。悪い虫が那和につかないように見張っていたのは兄貴だ。礼は兄貴に言え」
「はい」
「で、結局、福島で暮らすのか?」
「那和がホームショックになったのと、水も空気も合わないみたいで。働くにしても、この通り車椅子だし、前科者だし、年も年だし、なかなか働き口が見付からなくて。那和を養うため弟に厄介になることにしました」
「そうか。兄貴とちゃんと仲直りして、カミさんを大事にしてやれ」
「はい」
罪を一生かけて償っていく。真沙哉は那和に10年間越しのプロポーズしたとき固くそう誓った。
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