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新たな事件のはじまり

福島に旅立った那和と真沙哉夫婦を見送ったのち遼成と龍成は自宅ではなくそのまま組事務所に向かった。 「倅が迷惑を掛けてすまない」 「会長はなにも悪くない」 遼禅が亡くなったあと満場一致で新しい会長に指名されたのはこの十年、遼成の補佐をし、組を陰ながら支えてきた根岸だった。 十年前に熟年婚した伊澤とは今もラブラブで、若い衆も目のやり場に困るほどだ。 その伊澤は元マル暴のデカだった経験を生かし顧問として根岸や遼成や龍成を影ながら支え、そして、見守っている。 「悠仁とは絶縁し、奏音に二度と近付かないと誓約書を書かせたのに……」 悔しさを滲ませる根岸を伊澤が宥めた。 「悠仁は相当金に困っているみたいだった。奏音は悠仁を無視したが、しつこくつきまとい、学校の敷地内まで入ってきて男性職員に見付かり逃げ出した。調べたら、昔の仲間と詐欺まがりのことをまたはじめたらしい。悠仁は楽して金儲けすることしか頭にない。我が倅ながら情けない」

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