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新たな事件のはじまり

「しずくちゃんバイバイ」 「うん、また明日ね」 自宅の近くにある公園の前で友だちと別れひとりで歩いていたしずくに黒い影がひたひたと忍び寄る。 うろついている縣一家の若い衆に見付からないように細心の注意を払いながら、ニット帽を目深に被ったその男はしずくのあとをつけた。角を曲がれば自宅というとき、男は行動に移した。ポケットからナイフを取り出すと早足でしずくに近付いた。 「おぃ、おっさん」 物陰からぬっと姿を現したのは優真の守役の男だった。 「優真お兄ちゃんどうしたの?」 「不審者がうろついているって連絡があって、迎えに来た」 「不審者?」 不思議そうに首を傾げるしずく。 自分がつけられていることには全く気付いていないようだった。 「しずく帰ろう」 「うん」 優真がそっとしずくの手を握った。 「何があってもこの手を離してはダメだ。絶対に俺がしずくを守るから」 「ゆ、優真お兄ちゃん、あ、あの……」 突然のことにしずくの心臓は破裂寸前になった。恥ずかしくて優真の顔をまともに見ることが出来なくて。しずくは頬を赤らめながらずっと下を向いたまま優真に自宅まで送ってもらった。 「アンタ、根岸悠仁だろう?」 「違う」 慌ててナイフをポケットにしまうと男は一目散に逃げ出した。

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