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依然
「イチャついているのに邪魔して悪いな」
「悪いと思うならこんな夜中に来るな」
深夜の来訪者は裕貴だった。
「まだ公に発表されてはいないが、依然《イーラン》が教団の新たな代表に就任したと、優から連絡が入った」
「更生し母親のもとでごく普通に暮らしていると思っていたが、そうか、やっぱり:テウのところに戻ったか」
十年前、依然は九鬼小夏と呼ばれていた。当時十五歳だった少女は警察に保護されたあと、仮の戸籍を取得し更正施設へと送られた。出所後、地竜に救出され十七年ぶりに祖国の土を踏んだ母親と涙の再会を果たし一緒に暮らしはじめた。
「教団にいた頃は真っ昼間から遊び歩いて煙草を吸って、美男子たちにかしずかれ、それこそ贅沢な暮らしをしていたからな。学校に行ってないから簡単な計算も出来ない、読み書きも出来ない。日本語を覚る気がないからほとんど日本語をしゃべれない。コンビニエンスストアでアルバイトしているとは聞いていたがその日暮らしの生活に嫌気がさしたのかもな」
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