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遼成、心の声と葛藤する

「本部と龍一家の精鋭部隊を奏音としずくとさくらの護衛につける。悠仁はテウと裏で繋がっている。縣一家の構成員のツラをすべて調べて頭のなかに叩き込んでいる可能性があるからな」 「分かった。俺たちのところはそれでいいとして、子沢山の遥琉兄貴のところはどうするんだ?ひとりずつ護衛を付けたら大変なことになるぞ」 悠仁は菱沼組にも宣戦布告をした。 「倅が遥琉兄貴夫婦と橘夫婦に散々世話になったのにな。恩を仇で返すとはまさにこのことだ」 「遥琉も地竜も正しいことをした。逆恨みもいいところだ。そのうちバチが当たるぞ」 生活苦にあえぐ千夏と小夏に福島に来ないかと声を掛けたのは遥琉だった。 小夏は田舎での暮らしと人付き合いが鬱陶しかったのかも知れない。千夏は菱沼組の庇護を受け、いまも福島で一人暮らしを続けている。テウはかつて愛した千夏の口を封じることしか頭にない。 帰ろうとした裕貴を遼成がひき止め、それから三十分近く玄関先で立ち話をしたのち裕貴は愛する妻子が待つわが家へと帰っていった。 たまには龍成に花を持たせてやろう。 俺も少しは大人にならねぇとな。 ぶつぶつ言いながら、寝室でなく寝酒をちびちびひとりで呑むために居間へと向かった。向かったはずなのに気付けば寝室の前に立っていた。 襖戸に聞き耳を立てると、光希の甘く蕩けるような可愛らしい声が聞こえてきた。 我慢するんだ俺。 大人になるんだ俺。 理性を総動員し心の声と葛藤する遼成。

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