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一年ぶりの帰省
それから数日後。
茉弓から入院中の父親が危篤状態と連絡が入り、急遽、福島に向かうことになった光希。
三連休の初日。子どもたちを連れて約一年振りの帰省だ。
東京駅構内の新幹線ホームで菱沼組幹部のハチとタマ夫夫が光希親子を待っていてくれた。
「極力護衛の数を減らしたら目立たないかなって思ったんだけど……」
「不用心にもほどがある。奏音は?」
「遼と龍と留守番。悠仁の狙いは奏音だから。それに連休明け早々テストがあるみたいだし」
「なるほど」
流線型の車両がゆっくりとホームに滑り込んできた。
「莉子ちゃん、危ないよ」
図鑑やテレビでしか見たことがない新幹線が目の前に現れたものだから莉子は大興奮。
しずくが慌てて抱き上げた。
「さくら、ゆっくりでいいぞ。前に誰もいない」
光希がさくらに駆け寄る前に青年がさくらに声を掛けていた。
「ありがとう……えっと……もしかして……一太……くん?」
自信はなかった。
まさかこんなところにいるはずがない。でも、声はいつも電話で聞く一太の声に間違いなかった。
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