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ママと一緒じゃなきゃ寝れない

「どうした莉子?」 莉子はじっと前を見て、エレベーターの方を指さした。 「嘘……なんで……」 思わず二度見、三度見してしまった。 「危ないからパパたちとお利口さんにして待ってて。そう頼んだよね?」 「ママと一緒じゃないと寝れない」 「子どもじゃないでしょう」 「まだまだ子どもだよ」 しれっとして答えると大好きな光希ママに駆け寄り、人目もはばからずぶんぶんと尻尾を振りながら嬉しそうにむぎゅーーっと抱き付いた。 遼と龍から聞いていたものの、予想を遥かに越える奏音のマザコンぶりに優も斉木も呆気に取られたのち苦虫を潰したような表情を浮かべた。 「もしかしてひとりで来たの?」 「だって俺だけ留守番なんて。酷いよママ。だから変装して来た。誰にも気付かれなかったよ」 「そういう問題じゃなくて」 弾よけのコウジが物陰からそっと見守っていることに奏音は気づいていないようだった。

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