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再会
9年前、遥琉は住まいを駅前の繁華街から、駅裏の一太が通学する小学校の近くの住宅街に移した。売りに出ていた築十年目の二階建ての家を購入したのだ。駅まで歩いて二十分掛かるが、大型のショッピングセンターがすぐ近くにあったりと生活するにはなかなか便利な場所だ。
十年遅れの甘々な新婚生活をはじめた那和と真沙哉は菱沼ビルディングの九階の通称ハート部屋に新居を構えた。
「しずくちゃんとさくらちゃん久し振り」
真っ先にふたりを見付けたのは心望と陽葵だった。
「ハルお姉ちゃんは?」
「部活だよ」
「そうなんだ」
残念そうな表情を浮かべるしずくとさくらに、
「大丈夫だよ。もう少しで帰ってくるから」
「ハルお姉ちゃん、ふたりが来るのをすごく楽しみにしていたんだよ」
心望と陽葵は笑顔で話し掛けた。
「光希さん、奏音お兄ちゃんこんにちは」
二人に気づくと慌ててぺこりと頭を下げた。
「ふたりとも見ないうちに大きくなったね。すっかり大人になって」
「光希さんも相変わらず綺麗です。ね、お姉ちゃん」
「うん」
「あら~~ありがとう」
嬉しくて光希の表情が緩みっぱなしになった。キャキャと盛り上がる女子たちに奏音は面白くないのか憮然とした表情を見せた。
「またお兄ちゃん焼きもちやいてる」
「心望ちゃんと陽葵ちゃんに焼きもちやいても仕方がないのにね」
しずくとさくらは顔を見合わせるなりププッとふきだした。
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