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未知さんに恩返しがしたい
「あの、弓削さん」
奏音は意を決し弓削に声を掛けた。揃いも揃って渋くてダンディーな男たちが菱沼組の屋台骨を支えている。弓削もそのひとりだ。
「未知さんに恩返しがしたいんです。ママに会えなくて寂しくて寝れない日は未知さんがよく添い寝してくれた。うんと甘えさせてくれた。だから、ママに会えなくても我慢することが出来たんです」
「姐さんは心が清らかなで優しいひとだ。血の繋がりがあろうがなかろうが分け隔てなく子どもたちを大切に育ててきた。その子どもたちの前で棘のある言葉で心ないことをボスママに言われたんだ。オヤジが注意したら、ひとを騙して金儲けしているんでしょう。サイテーな親。とまぁ、開き直った。やくざの子どもとしてただでさえ肩身の狭い思いをしているんだ。オヤジも姐さんもひとさまの迷惑にならないように生活してきただけにそう言われて辛かったはずだ」
「子供会には表のSNSアカウントとは別に裏アカウントがある。未知さんのことあぁでもない、こうでもない。あら探しして盛り上がっているみたいだけど」
「奏音さん、もしかして」
「遥琉おじさんと未知さんには絶対に迷惑を掛けない。一言ぎゃふんと言わせてやらないと腹の虫が収まらないから」
奏音は不敵な笑みを浮かべた。
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