105 / 173

恋のライバルは二人の父親

「めちゃめちゃカッコ良くて一瞬誰だか分からなかった。背、また伸びたね」 「そうかな?別に変わっていないと思うけど」 未知のほうから奏音に会いに来てくれた。 「姐さんをお守りしろ」 弓削とフーが舎弟たちにてきぱきと指示を飛ばし、臨戦態勢に入った。 「みんな大袈裟なんだから。気を悪くさせたらごめんなさい」 「未知さん、そうやってすぐ謝らない。気を遣い過ぎるのも良くないよ」 「分かってはいるんだけど……」 そこで言葉を止めると、目を細めお腹をそっと擦った。 「いま、何ヵ月ですか?」 「二か月に入ったところ。まさか赤ちゃんを授かるとは思わなくて」 「オヤジも優もずっと欲しがってましたよ」 「もぅ、やだ。恥ずかしい」 弓削の言葉に照れて真っ赤になる未知。 「六月十日が予定日なの」 「五月に生まれれば一太と遥香とトリプル誕生日ですね」 「うん」 未知がようやく笑顔を見せてくれた。 「未知さんは元気のない顔より、泣いた顔より、笑った顔のほうが可愛いです」 「ありがとう奏音くん」 「姐さんは、オヤジと優に泣かされてばかりいる。なんせ泣いた声が可愛いっていう変態がふたりいるからな」 「弓削さんそれ以上は」 未知がますます顔を真っ赤にした。 「奏音も大人だ。そういうのに興味が湧く年頃だ。もう七歳のガキじゃない」 「弓削さん、童貞を捧げるのは光希ママだって決めているのでご心配なく」 「近親もののエロ動画の見すぎじゃねぇのか」 ぼそっと独り言を口にしたあと、 「ま、父親ふたりに負けないように頑張れ」 奏音の肩をぽんぽんと軽く叩いた。 「はい」 目をキラキラと輝かせ奏音は大きく頷いた。

ともだちにシェアしよう!