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父親という名の鬼
「ユージ」
「シンパイシタヨ」
片言の日本語を話すふたりの若い女性がどこからともなく現れて悠仁に駆け寄ると我先に抱き付いた。ふたりとも長身で手足がすらりと長く、深いスリットが入った、背中が丸見えの赤いチャイナドレスを着ていた。
「ユージ、アタシノ」
「ユージ、アタシノヨ」
人目もはばからずキスをねだり、長い脚を悠仁の足に絡ませいちゃつきはじめた。
そんな三人を奏音は冷めた目で見ていた。
「昔と全然変わってないよね。子どもより女と金。そして、クスリ。服役して少しは改心したのかと思ったけど、貴方になにを言っても糠に釘。言うだけ無駄。遼パパも龍パパも貴方と違い愛妻家で子ども好き。パパたちもママも血の繋がらない俺たち兄妹に惜しみない愛情を注いで育ててくれた。お金も大事だけど、それよりも家族と縣一家のみんなが一番大事。そう言ってくれる」
「ただのホモ野郎だろうが。あぁ~~気色悪い。男が男を抱くんだぞ、想像しただけでゾッとする」
これみよがしに女たちの身体をいやらしく撫で回すと今にも折れそうな細い腰を抱き寄せ歩きはじめた。
「次に会うときまでには金を用意しておけ。五十万の十回払いで許してやる」
そう乱暴に吐き捨てて。
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