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光希を守れなかったらただじゃおかない
「コイツはクズだ。ペテン師だ。口先が上手いだけのクソ野郎だ。そんなヤツとよく付き合っていられるな。ご愁傷さま。ふたりの女に柚原は皮肉たっぷりにそう言ったみたい」
「へぇ~~そうなんだ」
「ねぇちょっと奏音」
「ん?」
光希が戸惑うのも無理がない。奏音はお風呂から上がってきて上半身裸で布団に潜り込んできたのだ。広い客間にふたりきり。子どもたちは橘夫婦のもとでお泊まりだ。
「莉子までまさかままたんって行くって思わなかった。でも、そのお陰でママとやっとふたりきりになれた。ママ大好き」
逞しい二の腕が回ってきてむぎゅーと抱き締められた。
「ママどうしたの?顔が真っ赤だよ」
「分かっているくせに」
「わかんない」
「へ?」
しれっとして答えると髪にチュッと軽くキスをした。光希はますます顔を真っ赤にし慌てふためいた。
「奏音、ママがどんだけ好きでも構わないが、一線だけは越えるなよ。忠告しておく」
ドアの前から遥琉の声が聞こえてきて、奏音も光希もぎくっとした。
「悠仁が駅前の飲食店で他の客と揉めて、取っ組み合いの喧嘩になり、その客の腹を撃って逃げた。いちゃついていても構わないが、光希を守りきれなかったらただじゃおかねぇからな」
ドスのきいた低い声で用件だけ伝えると遥琉はまたすっといなくなった。
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