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10年前の哀しい記憶
「湯山という男は奏音が楮山の息子だとは知らなかった。奏音を助けたその男は楮山の息子だということを知っていた。鳥飼、知っている顔の男はいるか?」
写真を遥琉から渡された鳥飼は、そこに写る三人の男たちをじっと見つめた。
「七日前にネットニュースでこの男の顔を見たとき、どこかで見たことがある顔だなとは思ってはいたんだ」
鳥飼が指差したのは真ん中に映る男。髪は茶髪。身なりは派手で年齢は四十歳くらいだ。
「昨日、悠仁が騒ぎを起こした駅前のガールバーで七日前にボヤ騒ぎがあった。キャストの女ふたりが友人同士で、店長と三角関係のもつれから、そのうちのひとりが発作的に火を付けた。壁の一部を焼いただけで火はすぐに消され大事には至らなかった。昨日は営業再開の日だったらしく、大勢の客で賑わっていたみたいだ」
「湯山は中国語で確か……タン シャン。柚原さんとカシラに聞いてみます」
玲士がふたりのもとに向かった。
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