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復讐の鬼女
「龍パパ、こっちに向かっているって」
「そう。ありがとうしずく」
それまで険しい表情を浮かべていた光希の表情がふっと緩んだ。
「さすがは奏音くんですね」
橘が声を掛けた。
「お手柄なのは奏音じゃなく、どこかで見たことがある、ずっと疑念を抱いていた一太くんのほうだよ」
「断定はまだ出来ないけど、確たる証拠がある。まさかすぐ近くにあの女がいたなんて。あ、そうだ。奈梛ちゃんは?」
「母親が生きているかも知れないと聞いても表情をひとつも変えなかったそうです。自分は鳥飼奈梛。肉親はフーパパと莉音パパと、あやみ姉さん。この三人だけだと」
「整形し名前も変えて……奈梛が娘だと知ってて、他人のふりをしていままで接してきたんでしょう。俺だったら絶対に無理だ。どこかでぼろを出す」
やりきれない虚しさに捕らわれながら庭で一太と遥香を中心に仲良く遊ぶ子どもたちを見つめる光希。その手元には一枚の写真が握られていた。
それは子供会の母親たちでファミレスに集まりランチ会をしたときの写真だ。黒髪を一つに束ねた、いかにも気が強そうな目付きの悪い女が遅れて到着した未知を馬鹿にするようにじろりと睨み付けていた。
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