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コウジと達治

「未知さんと卯月さんがふたりと同じことを言ってたんです。それを思い出して、同じだなって。悪気があった訳じゃないんです。だから、そ、その……」 しどろもどろになるナオ。 「俺も兄貴も似た者夫婦だ。気にすんな」 「そうだよナオ。ひとりでいるよりふたりでいたほうが絶対楽しいもの。だって人生は一度きりだよ。だから後悔して欲しくない。恋する気持ちを諦めて欲しくなかった」 光希と遼成と龍成が、長年達治に片想いしているコウジに気づかない訳がない。 光希と遼成と龍成は、最大の敵である弟ラブの譲治をいかに攻略するか。コウジ本人を交え、あれこれと策を練った。 遥琉に根回しをしてから、既成事実を作り、逃げ切る作戦を実行に移した。 福島に向かう3日前。いつものように若い衆と呑んでいたコウジと達治。気付いたらふたりきりになっていた。 コウジは達治に指輪を渡し想いを打ち明けた。 「他の仲間が障子の陰に隠れてことの成り行きを固唾を飲んで見守っていたの。おめでとうって花束と祝い酒を持ってふたりの前に出る予定だったんだけど、そのふたりはそのまま……そんな訳で、みんな出るにも出れず、ふたりが終わるまで一時間近く待っていたみたい」 「橘と柚原みたいにな。そういえば今もあのふたりは未知の声フェチなのか?」 「うん。聞き耳立ててるみたい」 「そうか」 龍成がクスクスと笑った。

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