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私のママはりんりんママと未知さんと光希さんだよ

「じゃあね、また明日。バイバイ」 友だちと一緒に学校を出た奈梛は自宅近くにある病院の前で友だちと別れた。 家までは直進距離で500メートル。神社の赤い鳥居を横に見ながら家路を急いだ。 「奈梛ちゃん」 神社の駐車場に駐車してあった黒塗りのセダンから女が下りてきた。厚塗りのメイクに派手な色のワンピースを身に纏い、いかにも高価そうな指輪と時計を見せびらかすように付けていた。 奈梛は完全無視で女の前を素通りしようとしたら、 「この前はごめんね。ママね、本当は奈梛ちゃんってすぐにでも抱き締めてあげたかったのよ」 媚びるような猫なで声に、奈梛は大きなため息をついた。 化粧の匂いと香水の匂いが交ざったなんともいえない匂いに顔をしかめた。 「卯月にあなたを人質に取られて、殺すって脅されて、だから、仕方がなかったのよ。相手はヤクザだもの。ママ、言うことを聞くしかなかったの。花とあやみを殺したのはママじゃないわ。未知よ。あの女狐がこの茶番劇を全部仕組んだのよ。悪いのはママじゃない。未知よ。ねぇ奈梛、ママと一緒にこの町を出てふたりきりで暮らさない?」 「言いたいことはそれだけですか?」 奈梛はポケットにすっと右手を入れ、女を睨み付けた。 「言っておくけど私のママはりんりんママと未知さんと光希さんだよ。母親に捨てられた私に未知さんは優しくしてくれた。ひまちゃんが生まれたばかりなのに、未知さんは私のことも同じように可愛がってくれた。一緒に添い寝してくれし、甘えさせてくれた。あんないい人、他にいないよ。私の大切な未知さんを馬鹿にしないで」 奈梛はポケットから防犯ブザーを取り出すと紐をおもいっきり引っ張った。

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