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私のママはりんりんママと未知さんと光希さんだよ
「光希さん、東京に帰ったはずじゃあ」
病室のベットに横になっていた奈梛は、予想もしていなかったことに驚き飛び起きた。
「だって奈梛が心配だったから、俺と莉子は福島に残ることにしたんだよ。子どもは全員、昇龍会みんなのかけがえのない宝物だもの。奈梛、無事で良かった。本当に良かった。奈梛にもしなにかあったら、そう思うと……」
光希は泣きながら奈梛の小さな身体をぎゅっと抱き締めた。
「光希さん、私……」
頭を撫でる大きな手と優しい眼差しに奈梛の胸は熱くなり、涙が溢れ、あとからあとから零れた。
光希の優しい胸のなかで、奈梛はしばらく泣き続けた。
ひとしきり泣くとようやく落ち着いたのか、
「光希さんも、りんりんママと未知さんと同じ匂いがする。私ね、このおひさまの匂いが大好き。でも、きつい香水とか化粧の匂いは小さいころからなぜか駄目だったんだ。あのひとに会ってようやくその理由が分かった」
鼻をずずっと啜りながら、涙を手で拭った。
「あのひとは母親じゃなく、ひとりの女性として、ずっと、死ぬまで、男のひとたちに愛されたかった。だから、お父さんだったひとも、花お姉ちゃんもあやみお姉ちゃんも私もみんな邪魔だった。いらない子だった」
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