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奈梛はいらない子じゃない

「奈梛はいらない子じゃないよ」 「奈梛ちゃんがいなかったら寂しくて泣くからね」 「奈梛ちゃんはみんなの奈梛ちゃんだよ」 「奈梛お姉ちゃんがいなかったら、算数と習字、苦手なままだったよ」 ドアがガラリと開いて、一太、遥香、太惺、心望、陽葵が病室に駆け込んできた。それだけじゃない。晴と未来も駆け付けた。 ー奈梛はいらない子なんかじゃない。もっと自信を持てー ーお兄ちゃんの言う通りだよ。奈梛ちゃんは私たちの大切な友だちだよー ー奈梛ちゃんがいなかったら私泣くからねー 光希がスマホを操作し、奏音としずくとさくらの声を奈梛に聞かせると、一度は止まったはずの涙がつぎからつぎに零れた。 ー無事で本当に良かったわー ー生きた心地がしなかったけど、元気そうな声を聞けてほっとしたー 鳥飼のスマホからは奈梛を心配する千里や心、凪や優真たちの声が聞こえてきた。 「奈梛ちゃん」 最初空耳だと思った。 だってここにいるわけないもの。 おそるおそるそっとドアを見ると、そこに立っていたのは……。 「嘘……」 信じられないとばかりに奈梛は震える手で口元を覆った。 「未知さん……なんで?」 「奈梛ちゃんのことが心配で、遥琉さんに帰りたいって頼んだんだ」 「あのひと、未知さんに酷いこと言った。だから私……」 「ありがとう奈梛ちゃん。僕の代わりに怒ってくれたんだよね」 こくりと頷いた奈梛を未知がそっと抱き締めると、光希と鳥飼は、そんなふたりを包み込むように抱き締めた。

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