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第7話 教育的(*)

「ああっ、届かない! お願いです、お情けを……!」  小鳩の華奢な指では、到底届かない場所。南郷が躾けたその場所を、触れるも触れないも、ひとえに南郷の気分次第だった。  今夜も鈴が鳴る。  壁に爪を立てて這う小鳩は、利き手の指を後孔に入れ、稚拙な自慰を繰り返している。その身体に後ろから手を回し、小さく色づいた乳首を南郷が弄り続けて、もうどれぐらい経つだろう。 「ぅ……ぅう……っ」  南郷に背を向けた小鳩は、尻をゆらゆらと振りはじめる。南郷は、今夜は気が乗らないのか、小鳩を追い込むだけ追い込み、一向に絶頂させようとはしなかった。 「あ……っも、お、お願い……お願い……、お情けを……っ、くださ……っ」 「やかましいぞ、小鳩」 「ご、め、なさ……っ、うぅ……っ」 「そんなに鈴を鳴らし続けて、それほど快いか。お前の望みどおり、今宵も「先生」が駆けつけてきたぞ」 「あぁ——……っ」 「視られるだけでは不満か」 「ひっ、ぅ……、欲しぃ……っ!」 「何が欲しい」 「あ……あ……、ゆび、だ、んなさま、の……長い、指が……っ」  南郷の問いに次々と雫は欲望を漏らす。ふらふらと身体をくねらせ小鳩が縋る壁には、永青の部屋に続く呼び鈴の紐が垂れている。その音を聞くだけで、永青は冷静ではいられなくなる。 「ぁぅ……っ!」  南郷が小鳩の乳首をつねると、その弾みでぱちゅっ、と音がし、後孔に差し込まれていた小鳩の指が抜ける。 「うぅ……っ、も、無理……っ、ねが……っ、ぁ、あぁぁ……っ、ああ——……っ!」  チリンチリン。  チリンチリン。  自室で聞こえた鈴の音が永青の脳裏に蘇る。気が狂いそうな冬の夜だった。 「……っ大佐——」  音が脳髄にこびり付き、目眩がする。永青が壁に縋り、恨む調子で唸ると、途端に部屋が静まり返り、小鳩の荒い息遣いと、暖炉の火がパチパチと爆ぜる音だけが聞こえた。 「何だ?」  振り返った南郷の目の底には、昏い影があった。それが歪む。 「臆したか? それとも、これを弄びたくなったか……?」  憎しみを込め睨む永青を、南郷は鼻先で嗤った。永青の葛藤など是非もなしと断ぜられる。 「入れて差し上げればよろしいでしょう……っ!」  暖炉の炎に暖められた部屋は、軽く汗ばむほどだった。きつく握られた永青の拳が震え、声が淀む。吠えずにいられない永青は、小鳩の断末魔の如き苦悶の声を聞きながら、正気でいられなくなりそうだった。 「私の愉しみに水を差すな。貴様がしてやればよかろう」 「それは……っ」 「小鳩、ここへ寝なさい」 「は……ぃ」  小鳩は濡れた頬のまま南郷のすぐ隣りへ寝そべると、蛙のような格好で膝を抱えた。頬が真っ赤に染まり、期待に膨れ上がった乳首は色づいている。晒された後孔はひくひくと震えながら、挿入を待ちわびていた。 「触れてみろ、鷺沢」 「……っ」  南郷に命じられ、永青は身体を硬直させた。 「私が躾けた身体だ。見事だと思わんかね。だが、貴様が拒むなら、今夜、小鳩は乳首だけで悶え狂うことになる」  南郷が永青の首筋に囁いた。 「貴様が決めるのだ」  触れるか、触れないか。  金縛りに遭ったかのような永青は拒むことができなかった。 (俺、は……っ)  逡巡する永青を未踏の地へと踏み出させるよう、南郷は強いた。 「小鳩。今夜は、此奴の指でいけ」 「ぁ……」  南郷の言葉を聞いた途端、小鳩は、滾り上を向いた鈴口から、とろりと透明な蜜を溢れさせた。後孔は石榴の果肉のような色で収縮を繰り返し、永青を誘っている。 「せんせ……」  小鳩が羞恥にまみれ、絞り出すような声を発した。その刹那、永青は理性を剥ぎ取られたように、小鳩の後孔に指を差し入れた。 「ん、ああっ、あああっ!」  灼熱の中、挿入してしまい躊躇うと、内壁がぎゅっと指を押し返そうとする。怯んだ永青を支えるように、南郷がその手首をがしりと掴んだ。 「こうするのだ、馬鹿者」 「あっ! ああっ!」  ぬちゃぬちゃと中をかき回してみせ、手首をぐいと曲げられる。 「力を入れろ。腹側を押せ。……そうだ。こうして可愛がってやれ」 「——……っ」  小鳩の腹側の薄い皮膚を揉むように押すよう命じられ、永青は南郷の指使いを覚える形で、小鳩の中を、やがて自らの意志で犯しはじめた。 「ぁぅ! ぁぁっ! いく! いってしま……っ!」  汗と涙に縒れてくしゃくしゃになった小鳩が限界を訴える。涎が垂れるのもかまわず喘ぐさまは、まるで美しい淫獣のようだった。 「はぁあああぁっ……!」  細い喉を仰け反らせ、小鳩が達するのを初めて直視する。ぎゅう、と中の指が締め付けられる。  刹那、波打つように収斂と痙攣を繰り返す内壁をまざまざと感じた永青は、目を瞠り、叫び出したい衝動を堪えていた。

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