いつの間にか、客は帰っていたようだ。 「亜季くん偉いね。ちゃんと待てたんだね」 　そして先の蜜を指に纏わせながら先端をくるくると弄られると悲鳴に似た声が漏れた。 「あぁ！　けい……ちゃ、はや、く……」 「ここ縛りすぎて真っ赤になってるね」 　もういきたいのに、啓太はもどかしい刺激しか与えてくれず、それは苦しくてまた涙が出てくる。 「あっ、あ……ん、んっ……」 「いきたいよね。ねぇ、亜季くん。これ口でしてあげよっか？」 　そっと耳元で囁かれると、まともな思考などもうとっくに放棄していた俺は朦朧としたまま口走っていた。 「く、口で、して……おねがい」 　すると啓太の長い指がまた後孔に差し込められたと同時に、その熱い舌が自身に絡みつき、悶えるように床に倒れ込んだ。 「あっ、あっ、あぁ……」 　待ちわびた強烈な刺激に全身を痙攣させながら悶える。指はまた増やされて圧迫感は増し、中のしこりを擦られた。 　舌の感触がたまらない。啓太の黒髪に触れ、その柔らかい髪を掴み欲望のまま腰を上下に揺らして、目の前に見える絶頂に期待していた。 「や、やぁ……はやく、あ、あっ、はやく……」 　しかし目の前に見えたはずの絶頂には、なかなか辿り着けない。 「けぃ……ちゃ、ん……な、んで……はやく……んぁ」 　啓太は一向に輪ゴムを外してくれず、締め付けられたまま延々としゃぶられたり吸われたりするのは、いきたくてもいけない拷問に近かった。 　しゃくりあげながら黒髪を掴むと、啓太は輪ゴムで縛られた部分を撫でながら口を離した。 「けい、ちゃん……ひ、ひどい」 「何が？　口でしてあげてるよね」 「いかせて、ねぇ、ん……ふっ、んぁ……」 　話している間も啓太は先を弄り、達しない程度の刺激を与え続ける。 　そして涙をめいっぱい溜めている俺を見ながら本当に愉しそうに笑った。 「涙でぐちゃぐちゃだね」 「も、やだ……やだ」 「最初に言ったよ？　もっと嫌がることもするし泣かせちゃうって」 　すすり泣く俺をあやすように耳に口付けて息がかかると、ベルトを外すような音が聞こえた。 「亜季くん、これ欲しい？　これでいかせてっておねだりできたら、今度はいかせてあげるよ」 　囁かれたのと同時に押し当てられて胸がどきっとする。そして先端を後孔に擦りつけられた。 「もどかしいよね？」 「ん、んぅ……ん」 「中のところいっぱい擦って欲しくない？　ねぇ、言って」 　また嘘をつかれるんじゃないかと過るも、唆された頃には散々焦らされて、もうまともな思考能力など残っておらず、こくこくと頷き、涙で濡れた目を凝らして震えながら声を絞り出した。 「おねが……して、中……いっぱい、して」 　啓太は欲に濡れた目を細め、喉を鳴らすと少しずつ腰を押し付けた。 「亜季くんは僕のものだよ。だからこれからは僕の前だけで、僕の為だけに泣いてね」 　そして啓太はじわじわと身体を拡げてくる。ぞくぞくとして思わず声が漏れれば、啓太は満足そうに笑いながら輪ゴムを外して一気に突き上げた。