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第13話

 画面は初期画面が表示されていた。ゲームなどのアプリ類は入っていないようだ。各務昭雄は一時期、パズルゲームにはまっていたのに、そのアプリすら見当たらない。  電話の画面を見てみる。電話帳を開くと見事に何もない。いや、一件だけ登録が残っている。相手の名前のない番号だけの登録。悠希はその番号に見覚えがあった。 (以前の俺の電話番号だ……)  当然、その番号は三年前に解約したものだ。悠希には繋がらない番号だけを残して、他の電話帳のデータは全て無くなっていた。  発信履歴と着信履歴も見たが、こちらも全て空っぽだ。初期化をしたにしては、電話帳に残された以前の自分の電話番号に、悠希は息苦しさを感じて思わず首もとへ手を這わせた。  這わせた指先に固く絞まった感触がある。どうやら黒のネクタイを絞めたままだったようだ。悠希は片手でネクタイを外しながら、もう片方の手の中にある携帯電話を操作した。  今度はメールフォルダを開いてみる。電話帳は空だから、当然、メールアドレスも存在しない。いや一件だけ、やはり悠希が昔使っていたメールアドレスが残っていた。  しゅ、と襟からネクタイを引き抜いて、無造作に隣の空いている席へ放り投げると、喉元のボタンを一つ外して大きく息をついた。  そのまま受信フォルダを開いてみた。そこにはずらりとこの携帯電話に送られてきたメールの件名が表示された。だが、何だろう。悠希はその並びに違和感を覚える。普段、自分の使うスマートフォンとは何かが違う。悠希は受信されたメールの時刻を見て、違和感の元が分かった。 (これは受信日時が古いものから並んでいるのか)  受信された最初のメールを開いて目に写った文面に、悠希はドキリとした。 (これは……。俺が最初にあの人に送ったものだ……) 『おつかれさまです。藤岡です。先方の担当者から連絡があり、明日は午後二時のほうが都合が良いとの事でした。どうしますか?』  確か、新入社員研修が終わり、配属された部署の初めてのプロジェクトでのやり取りだ。  その頃、まだぺーぺーだった悠希は、電話番に資料作りと称したコピー取りばかりをやらされていた。そんな中、ひょんな事から当時課長だった各務と一緒に、初めて客先へ訪問することになった時のメールだ。 (こんな十年も前のメールを……)  次の受信メールを開いてみる。それも悠希から各務宛てへの素っ気ない事務的な文章だ。それでも大学出たてのひよっこだった当時の悠希が、かなりの考慮の上に相手に失礼にならないように絞り出した文面だった。

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