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第17話
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「おまえも……、そうなのか?」
問いかけに悠希は微かに頷いた。もう隠していても仕方が無いだろう。まともに自分の上司、各務昭雄の顔を見ることが出来ない。
「まあそうだよな。あの店はそういったところだし……。だけど、今までにおまえを見かけたことはなかったなあ。藤岡なら一目で印象に残るのに」
その言葉に悠希は少し顔をあげた。
「印象に、残る?」
不思議そうに聞き返した悠希に各務は笑いながら、
「そうだよ。おまえは綺麗な顔をしているし体つきもほっそりとしている。少し中性的な魅力があるよ。それに今年入社の新人の中では女性達に結構人気があるんだぞ」
知らなかったか、と笑いかけられて、悠希は恥ずかしさにまた目を逸らした。
「よく行くのか? あの店」
各務の問いに、いいえ、と悠希は返事をした。
「一人で行ったのは……、今夜が初めてです」
霞んで消えそうなか細い声を、それでも各務はちゃんと拾って、
「じゃあ、何度か誰かと一緒に行ったってことか。あそこで男を漁ったのも今夜が初めてなんだな?」
――男を漁った。
その一言に悠希は大きく肩を落とした。
一番知られたくない相手に自分の浅ましい部分を知られてしまった。週明けの出社を思うと気が重くなる。よりにもよって会社の上司に自分の性癖を知られたのだ。
「まあ、そんなに落ち込むな」
見るからに気を落としている悠希に各務は明るく言った。そして、いきなり手を伸ばすと悠希の頭をぽんぽんと撫でた。それに、びくりと驚いて悠希は顔を上げると、そこには会社で見る各務の頼もしい笑顔があった。
「今夜のことは内緒にするよ。それに、おまえよりも俺のほうがかなりヤバイんだぞ」
「各務課長のほうが?」
「そうだよ、よく考えても見ろ。俺は中学生の息子と小学校に上がったばかりの娘を持つ父親だ。もちろん女房もいる。そんな奴が家族が今夜留守なのを良いことに、夜の盛り場で一夜の相手を探していたんだ。それも男を」
そこまで言うと各務は自虐的な笑みを浮かべて、
「おまえよりも俺のほうがかなりヤバくないか?」
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