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第18話
覗き込むように言うその表情に、悠希は思わずふふっ、と笑ってしまった。
(どちらがより立場が悪いなんて無いのに……)
それでも微かに笑みを溢した悠希に、各務はホッとした表情に変わった。
「おまえも俺も今夜のことは誰にも知られたくない。となれば当事者同士が口を閉じていれば誰にもバレることもない」
(黙っていろと言うことか)
もちろん悠希にも異論は無かった。各務の言葉に頷こうとしたとき、
「だがな、もっとより強固に口を閉じる方法がある」
各務の言いたいことが分からなくて悠希は首を傾げた。
「それは、二人で共有する秘密をもっと大きくすることだ」
各務が悠希の頭の上に置いていた手を後頭部へと滑らせた。そして、ぐっ、と力を入れて悠希の頭を引き寄せると、自分の唇を悠希の唇へ強く押しつけた。
急に近くなった各務の顔に悠希は瞼を閉じる間もない。焦点の合わない瞳を大きく開けて、その場に固まるしかなかった。固まりすぎて息も止めてしまった悠希の唇を、各務はゆっくりと食むと離れ際にさらりと舌で舐めた。
各務の顔が離れていって、その表情が見えるようになった頃に、ようやく思い出したように悠希は大きく呼吸をした。
「なっ、なにを……!」
悠希の叫び声を各務はにやりと受け止める。
「互いにセックスをする相手を探していたんだ。今さら、あの店に戻る訳にも行かないだろう? それにもうすぐ雨が降る」
(キスとセックスとハッテン場が繋がるのは分かるとして、なぜ、雨が降るなんて……)
ぽかん、と座り込む悠希をよそに、各務がその場を立ち上がる。その姿を追うように見上げると、ぽつりと頬に何かが落ちてきた。
(えっ、本当に雨?)
それはぽつぽつと落ち始めて、急に辺りを湿った埃の臭いが立ち込めてきた。
「さあ行くぞ。本降りになる前にどこかに入ろう」
笑いながら差し出された各務の手を、悠希は思わず掴んでしまっていた。
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