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第20話※
「……えっと、奥さんは……」
悠希の中途半端な問いでも、各務は汲み取ったようで、
「なぜ、男と寝るのに女と結婚したのか、か? まあ、はっきり言えば若気の到りと妥協だ」
苦笑いをしながら各務がベッドから立ち上がった。近づいてくる各務の姿に悠希はまたその場で動けなくなる。
「何だ、質問ばかりだな」
互いの吐息がかかる程に近寄られて、持っていたビールの缶を取り上げられてしまう。二人の体の僅かな空間から、各務の体温が伝わってくる。
「俺の妻は昔の上司の娘だ。どこを気に入られたのか、おまえに娘をもらって欲しいと頼まれた。その頃の俺は、まあ、それなりに成り上がりたいという気持ちもあって、その女と一緒になったら何かいいことがあるかもと思ったんだ」
冷たい言いように悠希は呆気に取られてしまった。
「でもドラマのようなことはそうそう無いな。上司はその後、さっさと定年して俺も未だに課長で燻っている」
各務が取り上げた缶をテーブルに置くと、ゆっくりと悠希の腰に手を廻した。そして、空いている手を悠希の下顎へと添えて顔を上向かせる。まだ気持ちの定まらない悠希に、
「もう質問は終わりか?」
聞きたいことなら沢山ある。だけど、それらは頭の中でぐるぐると混ざり合って、言葉として確立することが出来ない。
悠希を見下ろす各務の顔が近づいてきた。悠希は小さく震える唇で、
「課長は……、聞かないんですか? 俺のこと」
今にも重なりそうだった各務の唇から、ふっと吐息が漏れた。その吐息には各務がいつも吸っている煙草の香りが微かに混じっていた。
「そうだな、確かにおまえに興味がある。でも、それはこれからベッドの中でゆっくりと聞くよ。だから……。今は大人しくおまえを抱かせろ」
腰に廻された手で強く抱き締められると、噛みつくような口づけが降ってきた。強張る唇を滑った舌が強引に割り込んで、口内を舐め廻される。
「んんっ」
息を継ぐために喘ぐと、その喘ぎすらも取り込もうと各務の舌が奥へと入ってくる。やがて捉えられた悠希の舌はねっとりと絡め取られて、きつく吸い上げられた。
「ぁ……っ、ふっ、ん……」
息苦しさの中で何とか呼吸を確保する。粗い吐息と小さな喘ぎと重ねた唇から響く水音が、悠希の股間を熱く滾らせた。
深いキスを交わしながら悠希と各務は縺れるようにベッドに二人して倒れた。シーツに押さえ込まれると、やっと各務が唇を解放してくれる。細く糸を引いた唾液を一舐めで拭って、満足気に各務は悠希を見下ろしていた。
「じゃあ、今度は俺が質問しようか」
にやりと意地悪そうな笑みを顔に張りつけて、各務の手が悠希のバスローブの袷から胸へと滑り込んできた。
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