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第22話※

「女か。だからノーマルの奴は嫌なんだ。飽きたら直ぐにポイ捨てだからな」  各務は臍から下腹へとさらに唇を進めながら、悠希の太ももをゆっくりと撫でた。 「おまえは女と比べても遜色が無いよ。こんなにキメの細かい肌の奴は初めてだ」  きっと悠希の花茎の先からは透明な雫が溢れているはずだ。喋りかける各務の吐息で繁みが揺れる度に、悠希の羞恥心が増していく。 「色も白くて皮膚は柔らかいのに、ちゃんと筋肉はついているんだな」  各務が右腕を伸ばして、悠希の胸から脇腹を伝って腰、太ももと体の線を確認するように手のひらを滑らせる。 「ノーマルの奴らは興味本意で同性を抱く。こちらは相手を好きになって、死にもの狂いの恋をしているのに、スポーツ感覚で突っ込まれて捨てられるなんて酷い話だ」  各務の言葉に悠希は眼を見開いた。確かにそうだった。最初の相手は同じ部活だったクラスメート。背が高くひょうきんでクラスの人気者だった。  夏休みの部活の合宿で、顧問の眼を盗んで部員でエロ本を回し読みした夜のことだ。  刺激的なグラビアと何人かの彼女持ちの武勇伝を聞かされて皆、興奮していた。顧問にいい加減に寝ろ、と怒られて眠りについたが、暑い夏の夜は寝苦しくて悠希はそっと部屋を脱け出して外に涼みに出た。  しばらくして帰ろうとした時に彼はやって来た。確か、どうでもいいような他愛の無い話をしたと思う。もう部屋に戻ろうと言った悠希を彼はいきなり、その場で力任せに組み敷いた。そして、「藤岡は良い匂いがして堪らなくなる」と、悠希に迫った。  悠希も先ほどの浮かれた熱が冷めていなかったから、何となく、良いよ、と言った。でも、まさか自分が相手から突っ込まれるとは思ってもいなかった。  その時、自分が男に組み敷かれる状況に嫌悪が無いことに気がついた。むしろ、その友人に対する想いがはっきりと恋心なのだと分かった。  それから何度か二人で寝てみた。若さゆえなのか、彼のセックスは突っ込んでは吐き出すを繰り返すだけの味気無いものだった。  それでも悠希は彼のことが好きだったし、彼の要望には応えたいと思っていた。だが、彼はあっさりと悠希に一言の相談もなく県外の大学へと進学し、合コンで可愛い彼女が出来たと悠希にメールをしてきた。  彼にとっては仔犬のじゃれあいのような関係だったのか、と遣る瀬無い気持ちで悠希は同級生の連絡先を携帯電話から消した。

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