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第28話※
大きく奥へ打ち込まれた剛直が悠希の一番弱くて儚いところを攻める。途端に悠希の花茎が硬さを戻してふるふると歓喜に戦慄いた。
「んんっ! また、だめっ! ァァ」
叫ぶ声が掠れてひゅうひゅうと喉が鳴る。きつく閉じた瞼からは涙が溢れてきた。それでも各務は止めるどころか、さらに勢いを増して悠希の後蕾の奥を蹂躙した。
「あああっ! あっ! ひぐっ」
各務が悠希の唇に食らいつく。深く舌を入れられて息を詰まらせながらも悠希は無我夢中でそのキスに応えた。二人で唾液を交わしながら、手のひらで肌の温もりを探り合う。ふうっと唇が離れて行くと、各務の動きがさらに激しさを増した。
的確に悠希の源を掻き混ぜる各務に引き離されまいと、悠希は強く各務の腕を掴んだ。
「ああ、課長! ふぁっ……ぁ、もうっ無理っ!」
激しく身体を揺らされながら震えた声で弱音を吐く。ハッハッと短く呼吸をする各務が、
「いいよ。ほら、イっちまえ」
一層強く最奥を突かれた。苛まれ続けた悠希の前立腺から衝撃が走った。
「あっあっ、あああっ!!」
先ほどとは比べ物にならない勢いで花茎から白濁が射出される。各務の激しい律動のせいで悠希の花茎は揺らされて、その体液は悠希の腹や胸にまで飛び散っていった。
悠希に遅れて各務が息を詰めるとぐっと腰を入れた。ぐっぐっと何度か熱塊を奥へと追い込んだあと、各務はふうう、と大きく息をついた。
二人して粗い息を繰り返す。薄く開けた瞼の向こうの滲んだ視界に、こめかみから顎へと伝う汗を光らせた各務の顔があった。
「ぁ……んん」
各務がゆっくりと屹立を悠希の後蕾から引き抜いた。そのとき、悠希は蕾の奥に各務の仄かな温もりが残されていないことに気がついた。
(ゴム、していたのか……)
二人を隔てた薄い膜の存在に少し残念な気持ちになる。前の彼には、コンドームをつけるようにお願いしたこともあったのに。
各務が汗ばんだ厚い胸を悠希に押し付けてきた。至近距離で顔を見つめて、湿った悠希の前髪を優しくかき分けると額に軽いキスをされた。のしかかってきた逞しい胸の温もりに悠希は自分の肌に散った精液が気になって、
「……だめです。俺ので汚れてしまいます……」
悠希の台詞に驚いたように瞳を覗いた各務は、そのまま悠希の背中とシーツの間に両手を差し込むと、ぎゅうっと悠希の身体を締め付けた。
「か、課長?」
ちゅっ、と悠希の頬にキスをした各務は悠希の耳元に顔を落とすと、くくく、と含んだ笑い声をあげた。
「あの、課長……?」
「面白いヤツだなあ。終わったら抱き締めて欲しいって言っていたのに、抱き締めたら今度は汚れるからやめろと言うのか?」
あっ、と悠希は呟く。そうだ。自分が抱き締めて欲しいと各務に願いでたのだ。
「汚れが気になるのならやめようか?」
「いや、あの、その……」
腕の中で慌てる悠希の様子に、ますます面白そうに各務は笑って、
「馬鹿だな、やめないよ。おまえが嫌がってもやめない」
「課長……」
各務がさらに強く悠希の体を抱き締める。
「これはおまえに言われたからやっているんじゃない。俺の意思でしているんだ」
各務の低くて落ち着いた優しい声は悠希の鼓膜を心地良く揺らした。なぜだか嵐のような快感とは違って、ほわりとした温もりが悠希の全身を包み込んだ。
(今夜は、ひとりが寂しくて、誰かに慰めて欲しかっただけなのに……)
重ねられた各務の心臓の鼓動と、微かに匂い立つ煙草の香りに包まれて、悠希は緩やかに意識を手放した。
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