42 / 131
第42話
「確かにおいしいな。ホクホクしていて、とても甘みがあるね」
でしょう? と、彰吾は満面の笑みを浮かべて、悠希が口に入れた箸を使ってじゃがバターを口にした。
「今夜は井上さん達もラーメンを食べに行くんだって。だから一緒に連れていってもらうことにしたんだ」
はふはふと熱そうに口を動かして彰吾が言った。初対面の頃こそ、彼女達に対して消極的な態度を取っていたのに、打ち解けてくると彰吾は途端に人懐こくなるようだ。
「でも、明日の夜は悠希さんと雪まつりに行くからね」
ぺろりと紙皿の中を平らげて満足そうに笑う。到着した空港で昼食をとったばかりなのに、と悠希は彰吾の様子を微笑ましく見ていた。
次の観光地へ向かうため暖かなバスへと乗り込む。今度は女性陣に呼ばれて彰吾は彼女達の近くに座った。お役御免かと悠希は各務の隣へと腰かけた。
「彰吾くん、人気者ですね」
「まあな。可愛がってもらえるのはいいが、あいつが彼女達に奢られる度に俺が礼をしなくちゃならない」
「何かご馳走したんですか?」
「この寒いのにソフトクリームをご所望されたよ。高かったぞ。それを五人分だ」
苦い顔をした各務が悠希には可愛らしく見えてきた。
「今夜は彼女達とラーメンを食べに行くと言ってましたよ」
ええっ、と各務は小さく驚いて、
「なんだ、あいつ。俺の断りもなく。今度はご馳走になるなと言っておこう。あいつは一人だが俺は五人分の面倒を見なくてはいけなくなるからな」
確かにそれは大変だと、悠希は思わず笑ってしまった。
一日目の観光を終えて今回の宿となるホテルへと到着した。各々、荷物を持ってホテルのロビーに入ってからが、悠希の出番になる。
フロントにチェックインをすると部屋の鍵を預かって、それぞれの部屋に割り振った人達に手渡す。それが終わると宿泊の注意事項を彼らに伝えて、今夜の宴会開始の時間を知らせた。
三々五々に皆が部屋へと向かい始めると、彰吾が悠希の傍に寄ってきた。
「悠希さんの部屋はどこ?」
悠希はホテルの館内図を見せて指を差した。
「離れてるね。俺の部屋だけ階が違うんだ」
元々、各務と二人で過ごす予定の部屋だった。旅行会社から館内図と予約された部屋を見た時に、ここにしようと決めたのだ。
ともだちにシェアしよう!