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第44話

 予想通りに各務はフロントに部屋の鍵を預けていて、それを受け取った彰吾と一緒に悠希は各務親子の泊まっている部屋へと向かった。彰吾は部屋に消えると、直ぐに入浴の準備をして出てきて、またフロントに鍵を預けたあと二人で隣の温泉施設へと向かった。  もう夜も遅いからか、それともまだ夜の札幌の街を満喫しているのか、思いの外、利用客はいなかった。脱衣場のロッカーを確保して悠希が着ているものを脱ぐと、隣のロッカーの扉の影で彰吾もモジモジと服を脱ぎ始めた。  二人で手にタオルだけを持って広い浴場に入る。中にはちらほらと人がいて、悠希と彰吾は手早く体と頭を洗うと浴場の中央にある大きな浴槽へと体を沈めた。  ここまでの彰吾は昼間の人懐こさはどこへいったのか、少しおどおどしながら、悠希と目を合わさないように無言で一連の動作をこなした。それでも時折、ちらちらとその視線が自分に注がれているのを悠希は感じ取っていた。 (裸なんて恥ずかしいよな)  自分も中学生の頃の修学旅行で、クラスメートとはいえ、不特定多数に裸を見られる入浴の時間が恥ずかしくてとても嫌だった。まだ、あの頃は自分自身がゲイだとは気づいてはいなかったのだが。  少し離れて湯船に浸かる彰吾がやっと、 「ここって露天風呂もあるんだね」  大きな窓の外を見ながら言った彰吾に、 「本当だ。屋根があるから雪は積もっていないね」 「ねえ、行ってみようよ」  言うなり彰吾は、ザバッと立ち上がった。彼の陽に焼けた肌から、弾けるように湯が転がり落ちていく。 「ええっ、外は寒いんじゃないかな」 「平気だよ。十分に温まったし照明が点いているってことは入れるんでしょ?」  彰吾は嬉しそうに早足で露天風呂の入り口へと歩いていく。悠希もそれを追いかけると、彰吾がドアを開けた途端に冷たい空気が温まった肌に突き刺さった。 「うえーっ、さむーっ!」  彰吾は寒さに背中を丸めてざぶざぶと露天風呂へと入っていく。 「ふわあ、あったけー」  頭まで浸かりそうなくらいに湯の中へ体を沈めた彰吾の横に、悠希もゆっくりと近づいた。

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