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第48話

 動物園についてからは各々が自由散策になる。バスへの集合時間を伝えると悠希達幹事連は楽しそうに園内へと入っていく人々を見送った。 「それじゃ、俺達も入るか」  バスガイドと短い打ち合わせを終えた太田が悠希達幹事に声をかけた。その時、 「悠希さん! 一緒に行こう」  入場口の横で一人で手を振る彰吾の姿がそこにはあった。 「おまえ、あの子に悠希さんなんて呼ばれてんだ」  太田や山本のからかい口調に、まあね、と返事をして悠希は彰吾に駆け寄った。 「どうしたの? お父さんは? それに井上さん達と一緒に見学するって」 「女の人達は先にお土産を見に行くって言うから。そんなのに付き合うと時間がもったいないよ。父さんには悠希さんと一緒に廻るから大丈夫って言っといた」  父さんは部長さん達と行っちゃった、と彰吾はあっけらかんと言った。 「そうか。でも俺と一緒だと集合時間の三十分前にはバスに戻らないといけないよ。それでもいいかい?」 「それじゃ、早く行かなくちゃ!」  彰吾は慌てて悠希の左腕をつかんで入場口へと向かう。 「最初はホッキョクグマね!」  ぐいぐいと腕を引かれて悠希は太田達に先に行くと合図を送りながら彰吾の後をついていった。 「スゲーっ! かっけぇ!」  念願のホッキョクグマのプールの前に立って彰吾は興奮冷めやらぬ勢いだ。プールから上がったホッキョクグマはのしのしと歩くと、大勢のギャラリーをジロリと見て大きく地面を蹴った。ドボンッとプールに飛び込むと、厚いガラスに大きな前足をつけて体を反転させる。 「肉球でけー!」  先ほどから驚いた感想を素直に口に出す彰吾が、悠希は面白くて仕方が無かった。  水中のホッキョクグマの毛並みからキラキラと小さな水泡が浮かんでいる。真っ白とは言いがたい毛並みもふらりと水の中で揺らめくと、とても柔らかそうに思えた。 「ホッキョクグマには俺達がアザラシに見えているんだって」  後から入ってくる観覧者のために大きな水槽から後ろ髪を引かれるように彰吾は離れながら話をした。 「ちょうど、あのプールの水面から俺達の頭だけがホッキョクグマには見えるんだって。それが海の中にいるアザラシに見えるから捕まえようと飛び込むんだって」 (なるほど、自分達は餌なのか)  次はそのアザラシ、そして観客が並ぶ沿道を歩くペンギン達のパレードと、彰吾は悠希の腕をつかんで目まぐるしく動き廻った。  途中でレストハウスに立ち寄り昼食を取ったが、彰吾は食事よりも、次はどの動物を観るのかを園内パンフレットを睨みながら考えていた。

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