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第59話※

「あ……、課長。やはり……」 「ここをこんなにさせているのに?」  自分の股間の状態を責められると何の言葉も返せない。 「俺だってあのまま最後までおまえの口の中で果てても良かったんだ。だが、懸命なおまえの顔を見ていると……な」 (ずるい)  各務はいつだってそうやって悠希のなけなしの決心をぐずぐずと蕩けさせてしまう。  しゅ、と衣擦れの音が小さく聴こえる。悠希の腰に巻かれていた帯をすっかり外されてしまうと、各務は悠希の下着にも手を掛けて下げていく。薄い布地が花茎に引っ掛かり、ふるんと揺れながら下ろされたところで、悠希は自分で太ももまで下がった下着を脱いだ。  浴衣の袖だけが腕に掛かったままの悠希の体を、各務はなぜか後ろに向きを代えさせると背中から強く抱き締めた。うなじに軽く歯を立てられて思わず悠希が声を洩らす。すると、「声は出すなよ」と各務は歯形の薄く残った悠希の肌を軟らかく舐めた。 「ほら、あの薄い障子の向こうには彰吾が眠っているんだ。いくら起きないかもとは言っても分からないからな」  右の耳の後ろから囁かれた言葉に、悠希はびくりと体を震わせた。ほんの数歩先にある障子戸が、今は隣の部屋のフットライトの灯りで照らし出されて、暗がりにぼんやりと浮き上がって見える。その障子戸の向こうにいる少年は、自分の父親とその部下がこのような痴態を演じているなんて知りもせずに眠っている。  だが、もしも自分の快楽に溺れる嬌声が、彰吾の耳に届いたら……。  各務が自分の両足を悠希の足の間に置いて左右に開く。ゆっくりと開かれていく悠希の太ももの間に、すう、と少し冷えた空気が流れ込んで悠希の花茎に触った。  悠希の顎を持って肩越しに振り向かせると、各務は悠希の下唇を食んだ。背後から、左手で左の胸をまさぐられて固くなった突起を摘ままれ、右手は申し訳程度に右胸の突起を圧し潰したあと、悠希の胸からわき腹を伝って、少し硬さを無くした悠希の花茎を握りこんだ。  キスをしながら各務は握った手を上下に動かす。しかし直ぐにその動きは止まると、 「……隣の部屋が気になって気もそぞろだな」  各務はなかなか硬さの戻らない悠希自身に苦笑いをした。 「いつものは持ってきているか?」  ローションなんて用意しているはずもない。小さく首を横に振った悠希に各務は後ろから、ふぅ、と吐息を洩らした。 「それなら、やっぱりおまえに頑張ってもらわないといけないな。辛い思いをするのは嫌だろう?」 (……どういうこと?)

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