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第95話※
彰吾はあんぐりと口を開けたまま、目の前の二人の姿を瞳に写す。時折、小さく響く悠希の声がとても艶かしいものに聴こえた。はあはあと粗く息をして上体を動かす父親の様子で、ようやく彰吾は二人が何をしているのかが理解出来た。
(うそだ。そんなの嘘だ。だって……、悠希さんは男の人なのに……)
急に彰吾はくらりと眩暈を感じた。頭のふわふわ感が強くなって、まるで貧血を起こす前みたいだ。代わりに、ぎゅう、と自分の中心に血液が集中していく。
知らないうちに延ばした手が、ズボンの上から股間に触れると、そこは自分の一部とは思えないくらいに硬く熱くなっていた。
父親が不意に上体を起こした。彰吾は息を詰めて悟られないように体を小さくする。膝立ちの父親の手が悠希の腰を持ち上げると、肩から背中を伝って高く上げられた尻のラインが、綺麗な曲線を描いていた。
ズキンズキンと股間が疼く。彰吾は前を凝視したまま、無意識にズボンの中に手を突っ込んで、硬くなった自分のものを握り締めていた。
父親が動く度に腰を掴まれた悠希の頭が揺れた。布団から押し付けた顔を時おり上げて、微かに喘ぐ悠希の姿が彰吾の網膜に焼き付いていく。
「ぁ、ぁぁ、っ……ふ」
苦しそうだと思った声も、その中に淫靡な旋律が含まれているのが判ってくる。そして彰吾は、耳に入る二人の吐息とは別に、近くで粗く響く呼吸音がすることに気がついた。
(これ、俺だ)
いつの間にか彰吾は細かく息を継ぎながら、自分の芯を包んだ手を上下に動かしていた。
(すげっ。気持ちいい)
クラスの中には、すでに女の子と付き合っている友達もいる。兄貴の隠しているエロ本を持ってきた、と放課後にコソコソと回し読みをする奴らもいるが、彰吾はそういったものに全く興味は無かった。
だけど今、自分の父親と憧れと親しみを持ちはじめた歳上の青年が繰り拡げる交じりあいに、確実に彰吾は初めての性的な興奮を体感していた。
薄く瞼を開けて、父親とその部下が織り成す狂態を眺めながら自分の芯をしごいていく。
痺れる快感が芯から体を駆け巡る。それでも声を出すとここで覗いているのが二人にばれるかもという不安から、彰吾も悠希と同じように歯を食いしばって我慢した。
父親の律動に合わせて動く悠希の滑らかな裸体。それを見ながらオナニーをしている自分。痺れはパチパチと炭酸の泡ように生まれてきて、とうとう彰吾は昂る射精感に抗えなくなってきた。
「こんなに部屋は暗いのに、おまえの肌が薄紅に浮き上がって見えるよ。本当に……美しい」
父親の吐息混じりの声が、彰吾の脳裡に小さな棘のように刺さった。
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