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渉太と俺は違う。渉太は人の痛みをちゃんと分かって親身になる子だ。俺は見て見ぬふりをする狡い奴。周りの奴らは頼りになるとか優しいだとか言うけど、ただ表面上取り繕っているだけで気づいても必要以上に人に踏み込まないだけ。
物事が全て平穏に上手く回るように促しているだけ。そんな俺が藤咲に許しを請うなんて、虫が良すぎる話。
だけど、二人が自分に気遣ってくれていたことには違いなく、それをこのまま無下にはできなかった。大樹は、余計なことなど考えずに藤咲の背中を追いかけて、タクシーの後部座席に乗り込んだ藤咲の後に続いて、大樹も車に乗り込んだ。
「はぁ!?はぁ!?なんであんたが乗ってきてんの」
席を詰めるように促しながらも、藤咲は逃げるように奥へと腰をずらす。
大樹は「藤咲ごめん、同席させてくれ」と一言添えると此方を訝しげに見ていた運転手とバッグミラー越しに目が合い、軽く会釈をした。
「あんた車で来てんじゃないの?」
藤咲は口元を引き攣らせながら、反対側のドアに身体をベタりとくっつけて距離をとっていた。動揺しているのだろうか、普段冷静沈着な藤咲の表情が歪んでいる。
「藤咲送ったら、取りに戻る。それより、行先」
そんな藤咲と一悶着している暇もなく、前方から運転手の咳払いが聞こえてきて、行き先を促されていることを悟る。大樹は運転手の迷惑そうな空気を察して藤咲に促してやると藤咲は観念したように深く溜息を吐いた。
気怠げに後ずさって座席からズレた腰を持ち上げると前の運転席の背もたれに右手をかけて少し前屈みになる。
左にいる俺を意識しているのか、
大半は運転席と助手席の間を覗いて行き先を告げようとするが、藤崎は間違ってでも此方へ寄ってこようとしない。自分のことをかなり警戒しているようだった。
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