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途中で休憩を挟みながら、高速に乗り、都心から外れた地方のキャンプ場を目指す。律仁も前日は仕事のようだったし運転の交代を提案したが、「大樹は怪我もあるし寝不足だから寝てていい」と気遣われて、無理に食い下がることも出来ず、それに甘えて車内では再び眠り込んでいた。 途中の定食屋で早めの昼食をとり、のんびり運転で午後2時頃にキャンプ場に到着すると大樹名義で受付を済ませる。先にテントを立ててしまうことにして律仁と渉太を中心にして組み立てに入った。 湖が一望できる高台で作業を始める。 大樹は天体観測がてらのソロキャンプをすることが度々あったが、律仁がキャンプなどしている所を見たことなかったので、淡々と作業している事に驚いた。その事に関して突っ込んでみると、「なんかのバラエティー番組でキャンプしたことあるんだよ」と芸能人らしい回答が返ってきた。 それにしても、番組で一度やっただけで手際良くいくものなのかと疑問に思う話だが、律仁のことだから渉太にいい所を見せるために自宅で練習をしてきてもおかしくはない。 大樹も何をすればいいか分からず突っ立っている藤咲に時折手伝ってもらいながらも、ものの30分程で完成した。 4人用のワンポール型のティピーテント。多分律仁のことだから有名メーカーのものなんだろう。出来上がるなり、渉太と律仁は室内に入り寛ぎ始めた。 室内は4人なら十分入れるくらいに広くて、寒さ対策としてお洒落にラグを敷いているところがセンスのある律仁らしい。クッションや簡易的なソファを置いているあたりが自宅の部屋さながらで、下手したら此処に住める勢いであった。 やはりこういうのは、少年時代に秘密基地に憧れを持つ子供心を擽るなーと思っていながらも外から覗いていると隣の藤咲から「まさかここで雑魚寝する気ですか」と怪訝そうな表情で中の二人に問いかけていた。 「もちろん」と当たり前のように答える律仁に対して、「な、尚弥は無理しなくていいよ。いざとなったら車があるし……」とこの中では一番の理解者であろう渉太が藤咲を気遣う。「別に無理なんか……」と呟いていたが、右手で握った左拳を震わせていたので痩せ我慢をしているようだった。

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