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夕飯まで時間があるので、昼食を少し離れたところの食堂で食べてキャンプ場近くの温泉施設に行くとこにした。 口コミで星4はつくほどの巷では有名な温泉。温泉目的でくる人やキャンプ場を利用する人の御用達の場所だという。露天風呂にはキャンプ地からも景色を堪能できるが、自然に囲まれながら湖を一望することができ、広いお風呂に温まりながら身も心も洗われ、癒されると書いてあった。 律仁は都心ではないから気を張らず、ゆっくりできることに上機嫌だったし、渉太も楽しそうだった。俺も楽しみではあったが、藤咲は表情を一切変えずにいたため、尚更彼の反応が気になっていた。 俺が居ることを嫌がっていたとしても、藤咲が少しでも楽しんでくれていたら……なんて自分勝手に思う。 受付を終え、藤咲は当然、人と密接になる環境が苦手なので施設内で待っていることになり、律仁は一服してから行くと、喫煙所を差しては、休憩スペースへ向かう藤咲と共に自分達とは反対方向へと行ってしまった。 大樹と渉太は律仁に先に行っているように促されたので先に浴場の方へと向かう。 石畳の床に何ヶ所かある浴槽。 メインの大浴槽に泡風呂、肌がすべすべになるというにごり湯、サウナや水風呂なんかもあった。温泉自体が初めてだったのか、歓喜の声をあげている渉太。 流石週末なだけあって、それなりに人がいて、お年寄りから家族連れなど様々だった。各々空いている洗い場を使用しては、一日の汚れを洗い流し、大浴場内のメインのお風呂に渉太が浸かっているのが見えたので大樹も同じ浴槽に浸かり、湯口近くで一息ついた。 「先輩」 お湯を両手で掬って顔を洗っては、気持ちよくて思わず声をあげると、渉太がすいすいと身体で水を掻き分けながら此方へと近づいてくる。フェイスタオルを頭に折り畳んで乗せている姿が湯船浸かった小動物を連想させていた。

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