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夜空の下で·····
テント前にタープを張って気持ちばかりの風よけをしながら、薪ストーブが仄かに足元を温めてくれる。おまけに、アウトドアテーブルを活用してこの寒空には最適な野菜と豚肉がたっぷりの辛み鍋だった。
辛いけど野菜の甘みもあって癖になる味。
斜め向かいの渉太の隣に座り、彼に小皿に盛り付けてもらった具材を黙々と食べている藤咲も、温かいものを体内に取り入れたことによって心做しか落ち着いた様子をみせていた。
一方、俺の隣の律仁はというと、日常の目からの解放感からか、鍋が出来上がるまでにさも水でも飲むかのように持参してきた焼酎や日本酒を胃の中へと流し込んでいた。
そのせいか、鍋ができる頃には完全に出来上がっていて、どこぞの悪絡みする酔っ払いのように律仁に勧められていた藤咲は頑なに水以外は飲まず、渉太も以前お酒を潰れるまで飲んでしまった経験からか、炭酸飲料しか飲まなかった。
そんな若者二人をつまらないと言って拗ね始めた律仁に半ば呆れながらも大樹は付き合うようにして軽く嗜むことにした。
偶に都内で呑みに行くにしても、彼が完全に出来上がるまで呑むことは滅多にない。翌日の仕事を気にしてものもあるだろうが、酒による失態をおかさぬように細心の注意を払っているのだろう.......。
日頃はセーブしていて傍からしたら想像つかないであろうが、彼が酒豪であることは大樹と吉澤さんはよく知っているし、絡み酒でもあることも。多分驚いて居ないところから渉太も.知ってるのだろう......。
顔を紅色に染め、半ば回らない呂律で喋る彼はかなりお酒の力で上機嫌になっているようだった。締めのラーメンを食べ終え、片付けをしようとしても未だにグラスにお酒を注ぎ足そうしていた律仁の手を渉太が止める。
「律仁さん、流石に呑みすぎです。もうやめましょう」
「だいじょーぶだーらぁー」
渉太の頬をツンツンと、人差し指で突きながらも取り上げられたお酒の瓶を掴もうとするが、何度やっても掠っているので、大樹から見てもこの律仁は強制的にお開きにさせるべきだと諭した。
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