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そんなひん曲がった尚弥の返答にも「恋愛映画は好き嫌いがあるから」と尚弥を気遣って少しだけ物悲しさを残しながら笑っていたことに胸が痛んだ。 どうしても渉太はここまで素直でいい奴なんだろうか.......。 学生の頃は渉太の分け隔てなく接してくるその天真爛漫さが憎くもあったが、面白いくらいにコロコロと変わる表情は自分とは真逆で羨ましくもあった。 これくらい自分も素直になれれば苦しまずに済むのだろうか.......。 「渉太は観ないの·····?」 重たくなってしまった雰囲気を払拭したくて、浅倉さんの映画なら真っ先に鑑賞してそうな渉太に問う。 「観たいけど、明後日律仁さんとレイトショーで観に行く約束したから·····今日は先にパンフレットだけ買ってきたんだ·····」 すると渉太は遠慮がちに、だけど頬をほんのり赤らめながらも鞄から映画のパンフレットを取り出して見せてきた。どうやら先程の凹みを持ち直すことができたようで安堵する。 パンフレットを見せてきた途端に嬉しそうに話す姿を見て、昔から凄く熱心に浅倉さんの話を聞かせてくれたけど、今も浅倉さんのファンであることは健在らしい·····。 本当に渉太は表舞台にいる浅倉さんもプライベートの浅倉さんも全て引っ括めて好きなことが雰囲気から伝わってくる。これを相思相愛って言うんだろうか。理想の恋人のあり方なのだろうか·····。 「それ買ったらネタバレになるんじゃないの?」 「大丈夫だよ。映画見るまでは読まないから」 頭に御花畑が飛んでいるのを想像させるくらいな満面の笑顔で応えてくる渉太に「そう」と素っ気なく返すと「尚弥、今時間ある?」と渉太からの誘いを受けた。 特に断る理由もなく頷くと「良かった。尚弥に相談したくてさ、俺に付き合って」と手招きしてきたので、先を行く渉太に着いていく。 足を進めているとお店が立ち並ぶ大きい道路へと出た。暫く歩き、ショッピングビルに入ると、尚弥でも知る有名チョコレート店のロゴが目立つお店へと、渉太はなんの躊躇いもなく吸い込まれるように入っていった。 店内の所々にはハートの包みやらハートのチョコレートやらプレゼント用のセットの見本やら明らかに赤とピンクばかりの配色で、バレンタインを意識したディスプレイになっていた。 今は二月の十二日。明後日は世の中の恋人達の一大イベントと言っても過言ではない日だ。此処に連れてこられたということは渉太も、浅倉さんに渡す気なのだろう。

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