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再会するまでは憎くて堪らなかったが、自分を助けてくれた彼のことが気になり、長山も来るというキャンプに渉太から誘われた時、断らなかった。
彼の本質をちゃんと知りたくて·····あの昔遊んでくれていた優しいお兄ちゃんが本当の彼なんだと思う気持ちが少なからずあったからだ。キャンプの日の楽しそうに星空の話をしている顔を思い出す。キュッと胸を掴まれた感覚を覚えたかと思えば、時々自分が望む答えとは的外れな発言をしてくることに、苛立ち、悪態をついてしまった。
それでも笑って尚弥の言葉を受け止めてくれた彼に妙な安心感があり、まだ傍にいたいのに胸騒ぎのような焦りのような感覚をこれを恋だと認めてしまう先を想像すると身震いがした。
「渉太·····僕、怖いんだ。君も分かるだろ。僕は、君を好きでいながらも自分の中にある恋愛に対しての嫌悪感で君に酷い事をした」
忘れることは許されない過去。渉太だけではない、自分に言い寄ってきた中には本気だと訴えて来てるものもいた。そういったもの達の恋心を侮蔑するように散々弄んできては、
今頃自分も誰かを好きになりたいなどと思うなんて、それが上手くいかないなんて当然の報いのように感じていた。
「それは·····尚弥だって苦しんでいたから·····気づかなかった俺も悪かったし、おあいこだよ·····」
「やっぱり渉太は優しいんだね·····さっき浅倉さんの映画のこと、つまらないって言ったけど本当は観れなかったんだ·····物語の中の話でさえ、人と人が好き合って触れ合うことに強い拒絶を抱くんだ。僕だって誰かを好きになって君たちみたいに笑い合えたら幸せだろうなって思うのに·····だから、僕はまた傷つけるんじゃないかって·····」
陽だまりのように温かい渉太の言葉、自分は些細なことでさえも素直になれずに相手を落胆させているというのに·····彼の優しさには到底敵わない。渉太の優しさに甘えるように気づいたら自分の胸の内を洗いざらい話してしまっていた。
両手を組み合わせては奥歯を噛み締める。すると、組み合わせた両手の下に渉太の右手が添えられ、左手を上から乗せられた。
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