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「先輩はそんな弱い人じゃないよ。どんな時でも味方になってくれるだろうし、尚弥を見捨てることはしないと思う·····。尚弥、もしかして·····先輩のこと····」
真剣な眼差しで訴えてくる渉太から確信を突くような言葉に尚弥は大きく首を振って否定をすると彼はそれ以上は口を噤んでいた。散々自分の目で見てきた長山を知っても尚、その一歩が踏み出せない。
「·········アイツに僕の前から離れて欲しくない。だけど僕の中でその気持ちに折り合いをつけてしまうのはハードルが高いことなんだ·····。心と身体の拒絶を断ち切るのことは難しい··········でも変わりたい」
渉太の手がゆっくりと離され、深く思い悩んだように俯いたかと思えば、バッと顔をあげると近くの棚に陳列されていたチョコレートの箱を手に取り、手渡してきた。
「尚弥って本当に努力家だよね。ピアノで名誉なことしてるのも努力の証でしょ。それに律仁さんの映画もわざわざ観てくれてちゃんと克服しようとしてくれてる·····。無理にさ、恋だとか深く考えずにまずは先輩に感謝の気持ちだけでも伝えてみたら?この人の為にこの人の喜ぶことしたいなーって思えることは、恋とか愛とかなしにしても大切なことだからさ」
夜空を彷彿とさせる青藍の八角形の箱の真ん中は透明プレートで展望台のドームを現しているんだろうか·····。
そこには12の星座の記号らしきものが星座早見プレートのように書かれている。
棚に飾られていたサンプルの中身に視線を移すと真ん中には白とのマーブル柄が綺麗な青い球体のチョコが地球を表現しているようだった。周りの長方形のチョコレートには、その星座の姿がプリントされていた。
まさしく長山の好きな物が詰まった、彼が喜びそうなチョコレート。
優しい笑顔で笑いかけてくる渉太から尚弥は恐る恐る箱を受け取った。渉太が触れてきても平気なように長山に触れても冷静な心を保てるようになりたい·····。
そんな願望と共に自然と浮かんできた長山のあの星空を観ていた時の瞳が夜空に負けずとも輝いていた表情を思い出して、居た堪れない気持ちになる。
このチョコを僕が渡すことで長山の嬉しそうな姿を見れるだろうか·····。
藤咲は手に持った箱を眺めながら擽ったい気持ちになり、口元が綻んでは不思議と不快な気持ちにはならなかった。
確信はないけど·····長山となら自分はゆっくりでも進んでいけるだろうか·····。
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