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これじゃあ、まるで自分が藤咲のことを攫ってずっと傍に置いておきたいと主張しているようなもの。抽象的とはいえ、あまりの失言に動揺をしたが、幸い藤咲は首を傾げては言葉の意図を呑み込めていないようで安堵した。
「いや·····なんでもない·····ただちょっと感極まって藤咲にちょっとした雑学を教えてやりたかっただけなんだ」
咄嗟に誤魔化しては今の発言に深い意味が無かったことを表明すると「あんたってホント変なの·····」と再び頬杖をついて窓の外に目線を向けるとしばらく間を空けてから「でも、星にもそんなのがあるんだな·····」と遠くを仰ぐように呟いた。
「そう、だから神秘的なんだよ。一件、不規則に散らばってるように見えて、ちゃんとひとつひとつに意味があるんだ。実際に見た時、連なった星座を見つけられたときは、凄く気持ちが高ぶる。星座の位置だってちゃんと物語と通じるところもあってさ面白いんだよ」
やはり天体の話になると止まらなくなる。
藤咲が興味があるかなんてお構い無しに、澄ました横顔に気づけば熱心に語りかけていた。この間の天体観測でも、瞳をきらきらとさせて空を仰いでいた藤咲のことを見とれながらも冬の一等星のことを話した。
「この間も話しただろ、冬の大三角のこと。
一等星のシリウス、プロキオン、ペテルギウス。それぞれにもちゃんと形があって、おおいぬ座、こいぬ座、オリオン座と言って·····」
話しているうちに楽しくなり、もっと話したくなってしまう。夢中で話してると突如藤咲が鼻で笑い、口元が綻んだのを見て大樹は漸く我に返った。自分の悪い癖だ。
藤咲は差程興味ないと分かっていながら、知識をひけらかしてしまった。
だから今までの恋人にもつまらないのだと言われて飽きれられる。
「すまない。俺、口走りすぎたよな.......」
「·····あんたって面白いよな。ヴァイオリン弾いてる時とは別人になる。今の方が凄く楽しそう·····」
音楽好きの藤咲からしたらガッカリさせてしまっただろうか。心做しか寂しそうな表情を滲ませていた。
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