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一時サークル内で騒ぎになっていた律仁が渉太に会うために天体観測へ参加したときも、
暫く女子達の質問責めを受けて躱すのに必死だったが、彼女は輪の中に入らず毅然として通常通りに活動をしていた。
それには彼女自身にも身内に那月遼人 という今注目の若手アイドルグループの一員である双子の兄がいる境遇だからかもしれないが·····。彼女も周りには公言していない。律仁とのことで自らヒール役に回ってくれていたのがきっかけで、今まで謎のベールに包まれていた彼女のことを知るようになった。
「星杏の気持ちも分かるが、あんまり否定的になるのも良くないぞ。好きな物同士がいがみ合ったって疲れるだけだろ?お前たちはお前たちのペースで楽しめばいい」
サークルにいた時から星杏に慕われていただけに愚痴を洩らす彼女を宥めるが、どこか腑に落ちない様子が伺える。
平和主義の大樹が部長の時は、同じ好きな物同士の仲間であることには変わりないから、温度差はあれど、お互いの意見がぶつかり、派閥が起きぬよう両者の意見を汲みながら上手く仲裁に入れていた。
サークルを離れる時も多少の心残りはそれだった。だから、部長に推薦する奴は慎重に選んだつもりだったが·····。
確かに成田は自分がいた時から少しばかりの傲慢さと自身の意見が正しいと過信する、我の強いところは目立っていた。
大嶺なら真面目で柔軟性はある方かと思ったから上手くやれそうな気はしていたのだが·····世の中上手くはいかないよな·····。
かと言って最早卒業して部外者の大樹が出てきたところで事態は悪化するのは想像できるだけに下手に手は出せない。
「はぁ·····先輩がいたときは平和で良かったなあー」
星杏はガクリと肩を落として、深い溜息をつくと「|遼人《りょうと》みたいなちゃらんぽらんばっかりで嫌になっちゃう·····」と自身の双子の兄の素行と成田が似ているのか呆れ返っていた。
大樹が「星杏は期待の星なんだから大嶺を支えてやるんだぞー」と背中を押してやると小さく頷きながらもこの場は丸く収まったようだった。
「先輩珍しいですね、医学書ですか?」
ふと、星杏の視線が手元にで開いていた強迫性障害の本へと移されては問われる。勿論この本を手に取ったのは他でもない藤咲の重苦を少しでも理解し得たらという想いからだ。
「ああ·····知り合いに接触恐怖症の奴がいるんだ。そいつが克服したがってるから·····カウンセラーとか勧めてみたんだけどいい顔はしなかったんだ·····」
他人にこんな相談をしたところで何にもならないかもしれないが、手に取っている本のことを問われて誤魔化す訳にもいかず、特に返事を期待せずに流してくれさえすれば良かった。
しかし、星杏は顎に右手を当て、深く考え込むと何か思い立ったのか勢く顔を上げては平然とした顔で「それ読む意味ありますか?」と驚愕な発言が返ってきた。
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