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「拒絶されても本当にその子のことが好きなら、その拒絶ごとも受け止めるべきなんじゃないんですか?それが本当に心底からくる拒絶なのか、それとも彼女の中の葛藤からくる拒絶なのかちゃんと些細な彼女なりのサインで見極めてあげるんです」 多少の棘はあるものの彼女の言うことも一理なだけに大樹は傾聴する。得た信頼を失うのが怖くて態と遠ざけるような真似していた自分は愚かだと気付かされた。返す言葉が見つからず、ひたすら自分自身の行動を顧みていると、そんな大樹の様子を悟ってか星杏は慌てたように平謝りをしてきた。 「すみません。先輩に熱くなっちゃって·····でも、私の友達にもいたんです。接触恐怖症というか男性恐怖症の子がいて·····。その子は中3の時に電車で痴漢にあってそれ以来男の人と話すのもダメになっちゃって。でも当時、彼女の事が好きだった彼のおかげで少しづつ克服していったんですよ。彼が懸命に彼女と打ち解けようとして、彼女を笑顔にしてたんです。でもそこには、楽しいことだけじゃなくて、何度も苦労してきていたから·····先輩がそう思うのも分かるんです。 でも、彼女の心を溶かせたのは彼が本気で好きで献身的に支えてきたからこそ出来きたことだったんだって。それを傍で見ていて、本だとか倫理的なものじゃなくて、周りにいる人たちの支えが本人にとっては一番の特効薬なんだなー·····って思ったんです」 彼女は何処か寂しそうな表情を浮かべて語ると「だから先輩も、その子のことが好きなら懸命に支えてあげて下さいね」と陽だまりのような優しい笑顔で笑いかけてきてた。 彼女が語ってくれたのを聴いて自分は大きな間違いをしていた。彼女の友達が克服できたのが誰かの助けがあったからのように、きっと藤咲を支えてやれるのは自分しかいないような気がした。 藤咲はあの時「この気持ちが不快じゃないことを証明して」と言いながら手を差し出してきたことを思い出す。また抱えているものから抜け出そうと必死なのだろうか·····。 そして、苦しそうに俯き呟いていた藤咲から読み取れること·····。頼ってくれている藤咲だからこそちゃんと伝えなきゃいけない。 ただ気持ちを逸らして逃げるんじゃなくて、 藤咲に自身のこの気持ちを受け入れてもらえなくてもいい、穢らわしいと思われても構わない。でも、彼に人を好きになることは決して悪いことではないのだと教えたい·····。 藤咲のことが好きでも許してくれるというなら·····彼の傍にいたい。

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