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「ああ、あれでも人気アイドルだからな。喋りも達者な方だし」
律仁の天職なのだと言えるほど、音楽もできて演技もできてラジオのパーソナリティも任されて、見ない日などないくらい。
それに、今ラジオを通して聴こえる声音でも分かるように、本人も仕事に真剣に打ち込みながらも楽しんでいる。
番組宛に寄せられたお便りを読んでは、彼のアシスタントをしているであろう男性と会話を広げては時折、高笑いをしていた。
そんな律仁のラジオをきっかけに張り詰めた空気が溶かされたのか、藤咲から「あんた浅倉さんとアイドルしてたんだろ?あんたが言ってたから·····」と会話を切り出してくるようになった。
「まあー·····一年くらいで辞めたけどな」
アイドルをするからと言って藤咲の元へ通えなくなったことを彼はまだ覚えていた。アイドルになったものの、あっさり辞めたなんて自慢にならない恥ずかしい過去だが隠す必要もないので正直に話す。
「なんで辞めたの」
「ご覧の通り、アイドル活動より勉強の方が好きだったからだよ。それに父親もタレント兼任してたから七光りだって揶揄されるのに耐えられなかったんだ。まあ、それでも律仁みたいに野心があれば別だったんだろうけど、俺にはこの業界に縋り付く執着心はなかった」
「ふーんー·····あんたって意外とプライド高いんだな」
「はは·····そうかもな。今思ったら辞めてよかったよ。俺には性に合わない。ましてやこんなセリフ小っ恥ずかしくて無理だからさ」
半ば自嘲しながらも藤咲の反応を横目で気にしていた。道なりなのをいいことに一瞬だけ藤咲の方へと目線を向けるとタートルネックのニットに顔を半分埋めて肩を揺らしていた。堪え笑いから自分のアイドル姿でも想像して笑っているだと明確だった大樹は「お前、いま俺がアイドルしてるとこ想像したか?」と突っ込むと、藤咲は頷きながら大きな笑いに変わる。
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