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「砂糖と塩なんて見れば分かるだろ?」
砂糖は粒が細かくてしっとりとしているのに対して塩はザラザラっとしているのが特徴的だ。見た目で分からなくても味を確かめれば分かる話しだが「いや、分からんし。どっちも白いじゃん」と先程自慢していたのは何処へといった言い分に、隣の渉太も大樹の意見に同調しているようだった。
そんな冷めた視線を両端から浴びて気を落とした素振りをする律仁を「俺が今度教えますから一緒に作りましょう」と渉太が提案したことで会話にひと区切りがついた。
「ところでさ、俺は納得してないんだけどなんで、大樹が渉太ん家にいんの?」
先程までのおちゃらけた雰囲気から一変して怪訝な表情を浮かべると、この部屋には不自然なほど存在感を醸し出している60L型の黒いボストンバッグを目で指す。
律仁が警戒心を抱くのは無理もなく、恋人の家に大きなバッグを持って押しかけるなんてお泊まりでもするしか考えられないし、幾ら友達でも律仁からしたら気が気ではないのだろう。
律仁は疑うように顔を覗き込んできたので自然と身体が引けてくる。相変わらずの端正な顔立ちに、核心を突いてくるような鋭い眼力。別に渉太に対して疚しい気持ちがある訳では無いのにほんの僅かでもそんな気持ちが自分に潜んでいるのではないかと疑いそうになるほどだった。
「律仁さん。先輩をそんな目で見ないであげてください」
「だってー·····いくら大樹でも渉太と同じ屋根の下で一晩過ごすなんて落ち着いていられるわけないじゃん」
「だから先輩も気を遣ってわざわざ律仁さんを呼んだんじゃないですか。俺と先輩が間違いを起こすことは絶対にないです。先輩も事情があるんです」
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