158 / 292

19-4

大樹が「お前まさか、外でやってないだろうな?」と問いかけると、「まさか、周りの警戒心はあるから大丈夫」とピースした指の関節を二回ほど屈伸させ、相変わらずの調子の良さに溜息がでた。 溜息とともに羨望の的である二人を目視して大樹は、数日前の藤咲との出来事を思い出して胸を掴まれたような感覚を覚えていた。 やっぱりあれはないよな·····。 そんな心情を律仁に悟られたら余計に惚気をヒートアップさせかねないので、目の前にある白米を黙々と食すことで誤魔化した。 「それで、なんで渉太ん家に大樹が泊まることになってんの?」 一息ついて味噌汁を啜っていると漸く律仁から本題である話を振られると、口を割ったのは渉太だった。 「先輩、今家がないんですって·····。大学校内で大きい荷物を担いだ先輩をたまたま見かけて声を掛けたら、漫画喫茶で寝泊まりしてるって聞いて·····」 「そう、マンション引き払って住む所ないんだよ。もともと親父名義で借りてたマンションだったし」 「だから大学から近いし、家が見つかるまで俺の家に来たらどうかって提案したんです·····」 渉太が気を遣って声のボリュー厶を落としながらも律仁に説明しているのを大樹もそれに補足するように話すと、それを聞いた律仁は「なんでまた?」とより深く切り込んでくる。 遅かれ早かれ今の現状は律仁には言わずともバレていただろうし、渉太にも迷惑が掛かった以上律仁にも事情を話さない訳にはいかなかった。

ともだちにシェアしよう!