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「そうですか·····」 「宏明様は·····『僕は父上から長山を追い出された身です。本来であれば敷居を跨ぐことすら許されません。なので、いくら母上でも金輪際こういったものは受け取れません。それに、僕は僕で大切な恩師の元、とても豊かな生活を送らせていただいています。なので母上の心配されるようなことは一切ありません。どうか僕のことはそっとしておいて頂けませんか』と·····」 光昭さんを想うあまり憎悪に満ちた心の支配から彼の手紙によって解かれた宏明。彼も大樹と交わした言葉通りに未来を見据えて生きようとしている·····。長山を手放して自分らしく生きようとしている·····。 「大分、落ち着いた表情をされていたので驚きました·····。手紙は渡せたようですね。それを聴いた麗子様は余程ショックでおられたのか癇癪を起こされていましたが·····」 だから、今までに必要以上に自ら大樹の動向を追うようなことはして来なかった麗子が俺へと矛先を向け、昨夜の店にまで押しかけて来るようになったのだろうか·····。 「ええ、はい。そのお陰で兄のこと少しは理解出来たと思います。別れ際、俺に頭を優しく撫でてきたのは恥ずかしかったですけど·····初めて俺の兄なんだと認識できた気がします。藤咲のことは反省して引き下がってくれましたし·····」 宏明のことを話したことで唐突に想起した「アイツに関わったら俺みたいに全て壊して捨てでも手に入れたくなる」·····宏明の言葉、怒りに任せてとった昨夜の自分の行動。藤咲の表情が鮮明に思い出されては胸の内で鈍痛がする。 大樹は痛みを辿るように胸元を強く握りしめて窓の外を眺めていると運転席からの「つかぬ事をお聴きしてもよろしいですか?」の問いかけに頭を上げた。 「大樹様は·····尚弥様のこと好いていらっしゃるいますか?」 好いていると言っても色々な意味がある。 高崎がどのような意図で問うてきているのか、返す言葉を考え、沈黙していると「申し訳ありません、昨夜のお二人のやりとり·····私も拝見しておりました」と補足してきた。

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